町外れ郊外。
ここにとある怪人の弟子がいた。
「師匠は封印され宇宙をさ迷ったまま…俺にはまだモンスターを造形するだけのスキルはない。さてなんとかしてこの地球を征服してやりたいが…どうしたものか…」
この怪人の弟子は名をアングリカーンという。かつてジュウレンジャーと戦ったドーラ一味の幹部・プリプリカンの弟子である。
アングリカーンがぶつぶつ呟きながらあるいていると、ある草むらに何かを見つけた。
「ん?あれはもしや…」
アングリカーンが近づいてみると、泥人形のような物を見つけた。
「この形…間違いない!師匠の作った物だ!だかこれは作りかけの失敗作のようだな。でもここまで出来ているなら、後は俺でも完成させることが出来るはずだ」
アングリカーンは泥人形を持って自分の作業場へ戻った。
数日後…
「ふう、なんとか完成品したな。師匠の完成品より不格好だが仕方ない。後はこれを釜戸に入れて」
アングリカーンが泥人形を釜戸に入れてスイッチを入れると、機械が音を立てながら動き出し、モンスターを作りあげた。
そのモンスターはパティシエの格好をしているが、帽子がシルクハットだったり、スカーフの代わりにネクタイを絞めていたりと所々マジシャンの様な格好になっていた。
「おぉ、パティシエのつもりで作ったんだが、やはりまだ俺の腕が未熟だったか…まあいい、ドーラパティーよ!早速この星を征服するために、まずは自分達の世界に帰ったジュウレンジャーを始末するぞ!最初はプテラレンジャーだ!リシヤ族の世界へ向かうぞ」
「ジュウレンジャーくらい容易い!任せとけ」
アングリカーンとドーラパティーはプテラレンジャーを倒すべく、リシヤ族の元へ向かった。
リシヤ族の元へ着くと、プテラレンジャー・メイの居る城へ向かおうとしたが、メイはプリンセスで、城の回りは屈強な兵士達が警備していた。
「これは忍び込むのは難しそうだな」
アングリカーンがそう言うと「入れないなら、出てきて貰えばいい」とドーラパティーが手から透明な粘土のような物を出して捏ね始めた。
暫くすると、小さな妖精の飴細工が出来上がり、それに着色をした。
色を付け終わると、その飴細工の妖精が生きてるかのように動き出した。
「おぉ動いた」と驚くアングリカーン。
「後はコイツを城の中へ入れれば…」
ドーラパティが妖精を城の頂上の窓から忍ばせた。
「さて、そろそろ外の様子でも見に行こうかな」
白いドレスを着たメイが部屋から出ようすると、部屋の窓から妖精が入ってきて、メイの周りをくるくると回った。
「わぁ~可愛い妖精さん」
妖精は手招きをして扉を指した。
「私に着いて来いって言うの?」
頷く妖精。
扉を開けて妖精の後に着いて行くメイ。
「どこに行くの?」
何も言わない妖精にただただ着いて行くメイ。
普段は使われていない城の裏口から抜けて人気のない森の中へと進むメイと妖精。
暫く行くと森の中の拓けた所へ出た。
「ここに連れて来たかったの?」
妖精はメイの質問に答えることなく溶けて消えてしまった。
「え⁉妖精さん⁉」
メイは驚いて溶けた妖精の跡形を見た。
「それは俺の作った飴細工だ!お前を連れ出すための罠のな!」
メイの前に現れるドーラパティー。
「ドーラモンスター⁉何故ここに⁉」
「俺が作り出したんだ!バンドーラの代わりに俺が地球を征服するための礎として、プテラレンジャー・メイ、まずは貴様を倒してやる!」
ドーラパティに続いて現れるアングリカーン。
「バンドーラの残党がいたのね!ダイノバックラー!」
ドレスからバックルを出してプテラレンジャーへ変身するメイ。
「プテラレンジャー‼メイ‼」
「やれ!ドーラパティー‼」
両手にナイフを持ってメイに斬り掛かるドーラパティー。それに対してレンジャースティックで応戦するプテラレンジャー。
「そんな短剣だけで俺のナイフを受けきれると思うな!」
その言葉通り全ては受け切れず、徐々に攻撃を喰らってしまうプテラレンジャー。
「このままじゃ負けてしまう」
一旦距離を取るプテラレンジャー。
「プテラアロー!」
弓構えて矢を放つプテラレンジャー。矢は真っ直ぐドーラパティー目掛けて飛んでいく。
「そんな物喰らうか!」
ドーラパティーは矢に向かって水飴弾を放ち、矢を失速させた。
矢は勢いを失い、地に落ちた。
「そんな!」
「次はお前だ!喰らえ!」
今度はプテラレンジャー目掛けて水飴弾を飛ばすドーラパティー。
「ふっ!はっ!」
水飴弾を必死に避けるプテラレンジャー。
「この!すばしっこい奴め…」
攻撃の手を一旦止めるドーラパティー。
「今だ!プテラアロー!」
弓を再び構えてドーラパティーを仕留めようとするプテラレンジャー。
すると背後からアングリカーンが巨大な石でプテラレンジャーの後頭部を思い切り殴った。
「あっ…」
思わぬ攻撃を受けてその場に倒れるプテラレンジャー。
その後も何発か石で殴り続けるアングリカーン。
ついにプテラレンジャーは変身が解けて気を失ってしまった。
「ふぅ~、危なかったぜ」
汗を拭うような仕草をするドーラパティー。
「油断をするからだ。さて止めを刺してやるか」
アングリカーンが懐に閉まってあったナイフをメイに刺そうとした。
「ちょっと待て。コイツはまだ使い道がある。コイツの始末は俺に任せてくれないか?始末が出来たら教えてやるから」
ドーラパティーにそう言われて手を止めるアングリカーン。
「ぬぬ…仕方ない。しっかりと始末してくれよ」
そう言ってアングリカーンは若干不服そうにその場を立ち去った。
「こんな良い素材を簡単に始末されてたまるか。俺が芸術的に始末してやる」
ドーラパティーはメイを担いで、とある場所へ向かった。
「ん…ここは…」
メイが目を覚ますと両手足を拘束されて裸でアトリエのような所にいた。
「え?なんで私裸なの?!」
「起きたか。ここは俺のアトリエ件キッチンだ」
「ドーラモンスター!私をどうする気!」
「すぐに分かるさ。さて早速取り掛かろう」
ドーラパティーがメイをある装置の中へ連れて行った。
その装置は真ん中に小さな椅子があり、椅子がお椀の様な形をしていて、やや背もたれ部分が大きめのいびつな形のお椀形だった。その椅子の真上には漏斗の様な物が取り付けられていた。
「まずはお前をこの椅子の上セットしないとな。ポーズは~…あれにしよう」
ドーラパティーはメイの足を頭の上に持って来て、太股の前で手を組ませる形にした。まんぐり返しの状態である。
「いや!何この格好!恥ずかしい!」
「お前を辱しめるには素晴らしい格好だ。さて次は…」
装置の外に出て、何やらパネルの様な物を操作するドーラパティー。
「さあ、美味しい作品になれ!」
ドーラパティーがボタンを押すと、メイの真上の漏斗から熱いドロドロとした液体が降ってきた。
「熱い‼いや‼やめて‼」
メイが逃げ出そうと暴れるがまんぐり返しの上、ガッチリと固定されているので、逃げ出すことが出来なかった。
「いいぞ~!その液体は特製水飴だ。貴様がその水飴で全身コーティングされる頃には貴様は身も心も完全な飴細工となり俺の立派な作品となるのだ!わはははは‼」
高笑いをするドーラパティー。
その後もメイがいくら騒ごうとも水飴を止めることないドーラパティー。
暫くするとメイは何かを悟ったのか騒ぐのを止め、顔を俯かせて黙ってしまった。
「諦めたか。その負けを認めた表情も貴様の最後に相応しい顔だな。心配しなくても作品になったら、残さず食べてやるからな」
「(こんな奴に…こんな恥ずかしい格好で料理されて食べられちゃうなんて…悔しい…)」
いくらそう思ってもメイにはどうすることも出来なかった。
暫くしてドーラパティーがボタンを押して装置を止めた。
装置の中には全身テカテカにコーティングされ完全なる飴細工になったメイの姿があった。
その表情は悔しさと恥ずかしさが入り交じったようである。
「素晴らしい作品になったな。壊れないように盛り付けてからアングリカーンを呼ぶとしよう」
ドーラパティーはラズベリーソースが入った皿の上メイを逆さまにして盛り付け、秘部が上にくるようにして、その秘部に固いチョコで作ったT時型の小さな看板を刺した。その看板には
『メイを食べて』
と書いてあった。
「素晴らしい作品になったな。後は呼んだアングリカーンが来るのを待つか」
メイを眺めながら紅茶を啜るドーラパティー。
暫くするとアングリカーンがやってきた。
「おお!これは!」
メイの料理された姿を見て大声を上げるアングリカーン。
「どうだ?メイを飴細工にして盛り付けてやったぞ。」
「これは素晴らしい!食べれるのか?」
「もちろん。好きな所を食べてくれ」
「そうか!じゃあ早速‼あ、その前に…」
アングリカーンはカメラを取り出し、四方八方から撮影するアングリカーン。
「本当はモンスターを作るための情報用のカメラだが、このメイの姿はバッチリ収めておこう」
ひとしきり撮影を終えると足の部分を切り取り、舐め始めるアングリカーン。
「おー!飴の甘さとメイの甘さが混ざり合って素晴らしいハーモニーを奏でている。骨の部分までしっかり飴になっていて、これは美味い!」
「そうだろう。ラズベリーソースに付けて味わうと、また違った味が楽しめるぞ」
それを聞いたアングリカーンは腕と胸の部分をたっぷりラズベリーソースに付けてから味わった。
「ラズベリーソースと酸味と飴とメイの甘さが非常に合うな!さっきと違ってサッパリとした味わいで、これはこれで美味い!お前も食べてみろ」
「じゃあ俺はチョコ看板と一緒に味わうとするか」
尻や秘部をチョコ看板と一緒に味わうドーラパティー。
「これはそれぞれの甘さがお互いの甘さを邪魔せずに絶妙にマッチしている。どんなスイーツよりも素晴らしい美味さだ!」
思い思いの感想を言いながらどんどんとメイを平らげていく二人。
そして、あっという間にメイの飴細工は二人によって完食されてしまった。
「ふう~、食べた食べた。出来ることならもう一度食べたいものだ」
「あのメイをこんな風に始末するとはな。あの格好も味付けも最高だったぞ。そうだ、さっき撮影した画像を他のジュウレンジャーに送りつけて見せしめにしてやろう」
「それはいい。愕然としたジュウレンジャー達の姿が目に浮かぶようだ」
ハハハと笑う二人。
メイが盛り付けられていた皿は、どこかメイの無念さを物語っているようであった。